西成市民館で集会
1976年2月16日に大阪拘置所で鈴木国男氏(デカパン)が虐殺されてから、43ヵ年を迎えた。鈴木国男氏を知っている釜ヶ崎の労働者も少なくなっているが、「暴力手配師追放釜ヶ崎共闘会議(釜共闘)」で闘い、全国「精神病」者集団で闘っていた鈴木国男氏が主張し闘った内容を消してはいけないという思いで、「反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会(釜ヶ崎労働者の会)」は、2007年から糾弾集会を開催してきた。鈴木国男氏が寄せ場労働者として、また「精神病者」として、釜ヶ崎で闘った歴史や闘いの渦中で国家権力により大阪拘置所で虐殺されたという事実は、単なる「歴史」ではなく、寄せ場―釜ヶ崎での闘いの中味の問題、団結の中味の問題として、今日もわれわれに問われているのだ。
本年も2月16日、「釜ヶ崎労働者の会」は、「鈴木国男氏虐殺43ヵ年糾弾集会」を西成市民館で開催し、成功をかちとった。
正午、会場には続々と仲間が結集する。まずカレーで腹ごしらえをし、「釜ヶ崎労働者の会」が集会の開会を宣言する。「1976年2月16日、『釜共闘』で闘い、全国『精神病』者集団で闘いぬいていた鈴木国男さん(デカパン)が、大阪拘置所で保護房に叩きこまれ、体温を下げる注射を打たれて虐殺された。国家権力による鈴木さん虐殺を決して許さず、43ヵ年糾弾を闘おう」。続いて、参加者全体でシュプレヒコールをあげる。「鈴木国男さん虐殺を糾弾するぞ!」「大阪拘置所による虐殺を糾弾するぞ!」「『障害者』差別を許さんぞ!」「『精神病者』差別を許さんぞ!」「『障害者』解放闘争の前進をかちとるぞ!」「三者共闘で闘うぞ!」「いかなる差別も許さんぞ!」「団結して闘うぞ!」。
「釜ヶ崎労働者の会」が基調提起
「釜ヶ崎労働者の会」の仲間から集会の基調が提起される。鈴木国男氏が虐殺されたときの状況について、「1976年の冬、デカパンは『傷害』で逮捕され、大阪拘置所に留置された。彼は『精神病』の最中にあり、着衣を脱ぎ棄てているにもかかわらず、暖房もなく換気扇で外の空気にさらされる中で放置された。さらに体温を下げる注射を打たれ、凍死へと追い込まれた」とし、「デカパン虐殺43ヵ年にあたって、私たちは次のことを確認し、これからの釜ヶ崎の闘いの基調としていきたい」として、以下3点にわたって提起した。
「(1)デカパンの虐殺は、国家権力の暴力装置である監獄内での虐殺であり、寄せ場労働運動を闘い、「精神病者」解放を闘うデカパンに対する、徹底した「精神病者」差別による目的意識的虐殺であった」。
「(2)、デカパンの虐殺は決して『過去の問題』ではない。日帝は、1940年の『国民優生法』から『母体保護法』へと『優生政策』を継続しており、誰にも予測できない『再犯の可能性』を口実にして、『精神病者』を保安処分施設に隔離するための『心神喪失者等医療観察法』の施行や『安楽死・尊厳死』の法制化攻撃など、矢継ぎ早の戦時『障害者』差別―抹殺攻撃を仕掛けてきている。その中で、2016年7月神奈川県相模原市の『障害者』施設・『津久井やまゆり園』で元職員による『障害者』大量殺傷事件が起きた。安倍政府は、一昨年の通常国会で継続審議となり、衆院解散により廃案になった『精神障害者』に対する監視の強化・徹底化を図るための『精神保健福祉法』改悪案の再提出を狙っている。この改悪案は、『相模原事件』を口実にして、『精神障害者』に対する監視の強化・徹底化を図ろうという許し難いものだ。しかし、法律がなくても兵庫、宮城、広島では警察を入れた『個別支援体制』が動いている。そして、予算や診療報酬による誘導で法改悪の先取り的実態化が進められていこうとしている。これと対決していかなければならない。
政府―国家権力は、寄せ場労働者に対してはアブレ(失業)地獄―野垂れ死に攻撃を強めており、闘う労働者に対しては弾圧を強めている。安倍極右政府による本格的な戦争への突撃―改憲攻撃が激しくなる中で『在日特権を許さない市民の会(在特会)』など反共ファシストどもが、街頭で『ヘイトスピーチ』をがなりたて、インターネット上では差別書き込みがあふれ、差別主義・排外主義煽動が激化している。これらを断じて許してはならない。『心神喪失者等医療観察法』撤廃をかちとり、保安処分施設解体の闘いを釜ヶ崎労働者が最先頭で闘いぬこう。『精神病者』差別―抹殺攻撃を打ち破ろう」。
「人間を取り戻せ! ―大久保製壜闘争の記録」を上映
「(3)、釜ヶ崎―寄せ場労働運動を推し進め、『精神病者』解放の闘いを強化していく上で、デカパン虐殺糾弾の闘いを避けて通ることはできない。
今も釜ヶ崎は、全国から『釜ヶ崎に行けばなんとかなる』と労働者が集まってくる場所だ。『精神病』を抱える労働者もたくさんいる。釜ヶ崎で寄せ場労働運動を闘う者として、『精神病者』に対する差別を許さず、共に生き、共に闘うことが必要だ。差別分断支配を打ち破る団結を形成していかなければならない」。
以上の集会基調を全体の拍手で確認していった。
基調提起に続いて、ドキュメンタリー映画・「人間を取り戻せ!―大久保製壜闘争の記録」が上映された。東京・墨田にある大久保製壜資本は、1970年代に「身体障害者」や「知的障害者」を従業員の半数以上雇い入れ、国や行政から多額の助成金を得ていた。大久保製壜は、国や行政から何度も表彰される「福祉モデル工場」という名前とは裏腹に、実際には「障害者」への差別賃金、職制による暴言・暴行が横行していた。女性の「知的障害者」への「セクハラ」なども行なわれ、20日間連続夜勤などもあたりまえという劣悪な労働条件だった。1975年、大久保製壜の「障害」をもつ労働者はついに怒りを爆発させ、労働組合を結成して闘いに起ち上がった。大久保製壜労組の「障害者」と「健常者」は、大久保製壜資本の執拗な組合つぶし攻撃を、当該の固い団結と地域の労働者人民との共同闘争で粉砕し、22年にわたる争議に勝利していった。大久保製壜闘争は、労働組合運動にとって問われる団結の質において、一切の差別は絶対に許さないという原則を貫いた争議だ。参加した労働者は、迫力のある闘いの映像に熱心に見入り、「会社の汚いやり方は許せん」「労働者が団結したら負けない」と感想が寄せられた。
最後に、「団結ガンバロー!」で集会を終えた。